樹木希林 生きづらい若者へ

【#withyou ~きみとともに~】
 役者の樹木希林さん(75)が、生きづらさを抱える人たちに、直筆でメッセージを寄せてくれました。2013年の日本アカデミー賞授賞式で、全身がんであることを公表した樹木さん。以降も、治療を続けながら、精力的に役者業を続けていらっしゃいます。そんな樹木さんから編集部に届いた電話は、意外なものでした。(朝日新聞記者・松川希実)【画像】樹木希林さんの直筆メッセージはこちら。「こんな姿になっても…」
 編集部が樹木さんにインタビューを申し込んだのは7月中旬。それから約1週間後、突然、樹木さんご本人から、編集部に電話がありました。「ずっとずっと考えていて、お返事が遅くなっちゃったの。ごめんなさいね」
 数々の女優賞を受賞している樹木さん。映画などで聞き慣れた気さくな口調は変わりませんでしたが、一言一言考えながら、「どうしたら伝わるのかしら。本当に無力よね、まったく書けないの」と話を始めました。ずっしりとした重みがありました。
 しばしの沈黙の後、ふと樹木さんの口調が変わりました。
 「でもね、死んだ後の世界は素晴らしい、という風に、私は捉えていないの。生きている時より、大変らしいのよ。脅しみたいになっちゃうけどね」
 きっぱりとそう言った後、届いたのが、次のメッセージです。
 ◇ ◇ ◇
昔からの本を読むと およそ 同じことを言っている
自殺した魂は 生きていた時の 苦しみどころじゃ ないそうだ
本当かどうかは わからないけど
信用している
私は弱い人間だから
自分で命を絶つことだけは
やめようと 生きてきた
こんな姿になったって
おもしろいじゃない
KIKI KILIN 75才
 ◇ ◇ ◇
 樹木さんは、原稿料なども辞退し、言葉を振り絞ってくださいました。
 樹木さんは、以前、朝日新聞のインタビューに幼少期のことを振り返っています。
 <私の小学校時代を知っている人たちは「あの子が女優? まさかね」と、さぞ驚いたことと思います。だって、多くの人は私の声も聞いたことがないんですよ。いつも懐手をして、ほとんど口を利かない子だったんです。
 学校では、みんながいるところから、少し隙間を空けて立っている子でした。端っこから、周囲の人間をよく見ていました。――2018年5月10日 朝日新聞朝刊 『語る 人生の贈りもの』から>
 樹木さんの小学校時代のエピソードがあります。
 <私は何だかモサーッとしていて、運動会でもいつもビリでした。だから6年生の水泳大会ではクロールや平泳ぎじゃなく、「歩き競争」というのに出たの。そんな種目に出る上級生は私だけ。あとは小さな低学年の子たちでした。
 そんなわけでタッタタッタと歩いていたら、あっという間にゴールして1等賞になっちゃった。そしたら、賞品がね、他の種目と同じなのよ。周りの6年生が「なんだ、こいつ。ずるい」と不平を言ってるのが聞こえました。
 たぶんこの時、他人と比較しても意味がない、ということを覚えたんだと思う。それは今も続いています。――2018年5月10日 朝日新聞朝刊 『語る 人生の贈りもの』から>
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