被災の地元 マギー審司の思い

 平成最後の新年を迎えた。東日本大震災の発生後、出身地の宮城県気仙沼市など被災地への支援活動に積極的に取り組んできたお笑いタレント、マギー審司さん(45)にとって、「平成」とはどんな時代だったのか。自身のこれまでの歩みや地元への思いを交え、時代を振り返ってもらった。【遠藤大志】 
 ◇被災地から日本中を元気に
 ――1995(平成7)年、マイクロソフトのOS「ウィンドウズ95」発売を機に、インターネットの一般利用が爆発的に広がった。2000年代以降は動画共有サイトやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が登場。携帯電話やスマートフォンの普及も相まってエンターテインメントの受容のあり方も大きく変わった。
 科学技術がものすごく進歩した時代だったという印象です。若者の関心もテレビからインターネットに移りました。昔は友達との会話についていくために、人気番組を見ようとテレビにかじりついたけれど、今は動画サイトで見たい番組だけ見ることができますね。
 これ以上、スマートフォンが便利にならなくても、テレビが薄くならなくてもいいと思うこともあります。昭和生まれはなかなかついていけない。師匠(マギー司郎さん)が昔から言っているのは「ファクスの方が(マジックより)不思議だよね」って。やっぱりこういう謙虚さは(芸にとっても)必要なのかなと思います。
 ――90年代にバブルがはじけ、就職氷河期に突入。景気に翻弄(ほんろう)され、この時期に社会人になった若者は「失われた世代(ロストジェネレーション)」とも呼ばれた。
 高校卒業後の92年、19歳のときにアメリカに渡りました。実家の電器店が懇意にしていたすし店がアメリカに姉妹店を経営していたんです。「働いてみないか」と店主に誘われて1年4カ月間、現地で働きました。
 けど、英語が話せずうまくコミュニケーションができなかった。でも、小学校から好きだった手品を披露したらすごくお客さんが喜んでくれて。現地でプロのマジシャンとも出会って、この世界で生きていきたいと考えるようになりました。アメリカであまり話せなかったから、その反動でずっとしゃべるような芸風になっちゃったかもしれないですね。
 ――11年3月11日、東日本大震災が発生。東北にとってかつてない大災害となった。気仙沼市も津波で甚大な被害を受けた。
 震災当日は東京にいて、炎に包まれた気仙沼の映像をテレビで見ていました。まさに放心状態とはこのこと。家族とも連絡が取れずみんな死んでしまったのかと思いました。だけど、しばらくすると家族や友人の無事が次々と確認できたんですね。まるで一度死んだ人間がよみがえってきたように思えたんです。どんどん家族が増えていくような感覚。これをきっかけに、気仙沼に対する思いも特別なものになりました。
 残念ながら、津波で当時92歳の祖母が犠牲になりました。すぐ近くに山があったのに逃げなかったのは、(家に位牌(いはい)のある)おじいちゃんと一緒にいたかったからだと思います。自分の生き方を貫いたことはすごいことだと思っています。
 ――震災後は東北に多くのボランティアがやって来た。タレントやお笑い芸人も例外ではなかった。「文化・芸能に何ができるのか」。大災害という壊滅的な危機が表現者に根源的な問いを突きつけた。
 東京で街頭募金をしたり、気仙沼などでマジックを披露しました。残念だけど、東北出身じゃない芸人が被災地に行くと「売名行為」と言われることもあります。だからこそ僕が率先して被災地に行かなきゃという使命感がありました。
 震災の影響で自分も落ち込んでいました。正直に言うと、自分の気持ちを安心させるために被災地に行っていました。現実はつらいけど、受け入れて前に進まなければいけない。その思いが今の力になっています。
 ――被災地は震災から間もなく8年を迎える。平成期が終わり、新しい年号が始まる。
 次はどんな時代になるか分からないけれど、新しい宮城、新しい気仙沼になればいいというわくわく感があります。東北が元気になったら日本中が元気になる。被災地の人たちが結束して地元のために力を尽くしたら、その努力は倍以上になって返ってくるはずです。
 ■人物略歴
 ◇マギー・しんじ
 本名・三浦審。1973年、宮城県気仙沼市生まれ。小学生の頃からマジックに興味を持ち、高校卒業後に渡米。プロマジシャンの下、1年間の修業を経て94年にマギー司郎さんに弟子入り。以降、テレビを中心に「しゃべり」と「おとぼけ」を生かしたマジックで人気を博す。東日本大震災発生後から現在まで、気仙沼市など被災地を支援する活動を続けている。05年、第21回浅草芸能大賞新人賞受賞。
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