震災デマ 善意の誤情報が拡散

 災害直後に拡散されがちな、さまざまなデマ。北海道で6日未明に発生した最大震度7の地震でも、信ぴょう性のない情報がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で広がり、被災者の不安をあおっている。今回、SNS上でどのようなデマが広がったのか。たどってみると、被災者の不安とSNS利用者の善意を背景に、部分的に誤った情報を含む呼びかけが、被災者支援の目的で頻繁に拡散されていた。【大村健一/統合デジタル取材センター】
 ◇政党公式アカウントも拡散→削除
 <拡散希望 NTTの方からの情報です。只今道内全域で停電しているため電波塔にも電気がいかない状況なので携帯電話もあと4時間程度したら使えなくなる可能性がでてきたそうです。 なるべく1人で行動せず家族や仲間、友人などと共に複数で安全な場所に避難して下さい>
 地震の直後、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを通じ、この投稿が爆発的に拡散した。NTTドコモ北海道支社の広報担当者は「こうした情報は発信していない」と否定した上で、「基地局にはバッテリーがあり、それは一概に使用可能な時間が決まっているものではない。特に市役所などの拠点付近は24時間使えるようにしている」と説明する。
 つまり、デマではあるが、「バッテリーが数時間しか持たない基地局が存在する可能性もある」(広報担当者)といい、8日現在も北海道内の多くの地域で通話や通信サービスが利用できなかったり、制限がかかったりする状況が続いている。そもそも地震後は通話が殺到し、回線がつながりにくくなることが多い。今回の地震では、一部に正しい点もあるため否定しづらく、利用者が善意で被災者に注意を呼びかける内容のデマが目立っている。
 他にも、実際は市内の一部地域での断水だったにもかかわらず、「札幌市全域で断水」とするなど水道に関するデマもSNS上で広がった。道内各地で断水が発生していたのは事実だが、範囲などが誤っていた。
 立憲民主党の公式アカウントも、佐々木隆博衆議院議員の旭川市内の事務所から得た情報として、6日午前に「浄水場の自家発電が故障したため、石狩川水系の家は断水になるかもしれません。市内の約7割が対象になるそうです」とのツイートをしたが、間もなく旭川市役所が否定。7日午前に「以下の情報がデマとの情報がありました。お詫(わ)び致します」と謝罪し、投稿を削除した。
 2016年4月の熊本地震では、大西一史・熊本市長がデマを防ぐ目的でツイッターで被害や復旧に関する情報を積極発信して評価された。今回も、世耕弘成経済産業相が停電関連の情報を随時、投稿している。災害時、当局から密に情報が入る政治家や政党などが積極的に情報を発信する姿勢は浸透しつつある。一方で、影響力のあるそれらのアカウントが誤情報を流したケースは、7月の西日本豪雨でもあった。
 ◇悪意のあるデマは広がらず 
 今回、熊本地震の際にツイッターに投稿され、2万回以上リツイート(拡散)された「地震のせいで動物園からライオンが逃げた」などのような悪ふざけの投稿は広がりを見せていない。この投稿をした男性が偽計業務妨害で逮捕(後に起訴猶予処分)されており、「デマは違法」という認識が広がりつつあるようだ。
 また、1923年の関東大震災や、熊本地震などで寄せられた「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」「外国人窃盗団が被災地に押し寄せている」など人種差別的な意図を含むデマも広がっていない。
 しかし、基本的に投稿が公開されており、第三者が「その情報はデマだ」と指摘しやすいツイッターではなく、無料でメッセージをやりとりできるスマートフォン向けアプリ「LINE(ライン)」で拡散された偽情報が目立つ。
 特に、一見すると「熱中症などに気をつけて」などと有益な情報に見せかけて、「午前8時付近に大きな揺れが予想されているようです(自衛隊情報)」といった虚偽の情報を紛れ込ませ、「他の方へも情報提供をしてください」と拡散を呼びかけるメッセージが個人間のやりとりで広がったようだ。かつての「不幸の手紙」や「チェーンメール」のような古典的な手口が再び流行しつつある。
 災害時のデマや風評被害に詳しい東京大大学院情報学環総合防災情報研究センターの関谷直也准教授は「部分的には正しかったり、もっともらしかったりするが、全体として誤っているといった情報は、災害時の流言の典型だ。デマは災害時の不安を土壌にして広がる。今回は水と電気、通信に関して不安が広がっていたので、それに関する流言がSNS上で拡散した理由であろう」と指摘する。
 悪ふざけのようなデマがさほど広がらなかった点については「地震の発生が午前3時過ぎで、その時間にSNSを利用している人が少なく、SNS利用者のピークである夜の時間帯まで時間があったからであろう。被害の全体像が判明した後では、不確実性が低いため、流言は発生しにくい」と分析する。「過去の事例を踏まえれば、今後は地震の再来を予知する流言などが予想される」といい、「災害時のデマにはいくつかの典型があるのでそれらを踏まえておくことが重要だ」と注意を呼びかけた。
【災害に関するデマの典型】
(1)被害流言
 「被災地に窃盗団が向かっている」などの偽情報。実際は犯罪の件数は減少する場合がほとんどだが、一般的には増加すると信じられていることが拡散の背景にある。
(2)災害再来流言
 次に災害が来る時刻や場所を予告する内容。地震の場合、実際に余震が続くことが多いため備えを促す側面もあるが、具体的かつ科学的な根拠はなく、被災者の不安をあおる。
(3)後予知流言
 いわゆる「地震雲」などの気象現象や「クジラが海岸に流れ着いた」などの動物の異常行動から「災害は予知できたのではないか」とする内容。災害とこれらの現象との因果関係は証明されていない。
(4)災害予知流言
 災害前に「この日に災害が起こる」などと予言するもの。雑誌などマスメディアでもしばしば掲載される。明確な根拠はなく、混乱を引き起こすことは少ない。
※関谷直也著「『災害』の社会心理」(KKベストセラーズ)を基に作成
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